天使とキューピッドの違い

美術ヌードモデルで男の娘の春海です。

西洋絵画では、天使は、多くの題材に使われて
います。

その多くは、裸で幼児です。しかし、中性的な
青年か少年の姿もチラホラ見受けられます。

天使と似たものでキューピッドというのもあり
ます。その二つの共通点は、羽が生えていてる
点です。

でも、実は、天使とキューピッドは、決定的に
違うものなんです。

それは、何でしょうか。

絵画ですが、ヌードが出て来るので不快に思う
方は、ご遠慮ください。

天使とは、何か

僕の顔を読み込ませた合成イラスト。
多くの皆さんが思う天使のイメージです。

天使と言えば、羽が生えていてパヤパヤと飛ん
でいるイメージがします。

ほとんどが幼児に描かれていて群れています。

弓矢を持っている印象が強いですけど、あれ実
は、宗教が違います。

天使は、アブラハムの宗教(ユダヤ教、キリス
ト教、イスラム教)の聖書に出て来る「神」の
遣いです。

あの幼児体形のは、天使の中でも最下位のエン
ジェルです。

天使には、下記表の様に階位があります。

一般的に絵画で見るのは、この表の⑧⑨の天使
です。主に、キリスト教を題材にしています。

愛のキューピッドなどの裸で弓矢を持っている
のは、実は、キリスト教と関係ありません。

キリスト教で題材にされているのは、大天使ア
ークエンジェル数人と、パヤパヤと飛んでいる
一介の天使達です。

絵画に詳しくない人のために3大天使と言われ
るミカエル、ガブリエル、ラファエルのお姿を
編集してみました。

羽が生えているのは、天使の共通点ですが、幼
児の天使とは、趣が全然違います。

荘厳な雰囲気です。

左からミカエル、ガブリエル、ラファエル。

ミカエルは、南の守護で火の気を持ちます。

ガブリエルは、西の守護で水の気を持ちます。

ラファエルは、東の守護で風の気を持ちます。

もう一人ウリエルを入れて4大天使として、
ウリエルは、北の守護で土の気を持ちます。

こうしたことを見ると、キリスト教は、中国の
風水の影響もうけていたと考えられます。

キリスト教のベースは、ユダヤ教。
イエス・キリストは、ユダヤ教徒です。

ユダヤ教のベースは、ウガリット神話とも言わ
れています。更に、そのベースは、シュメール
神話です。二つとも多神教です。

その他にも、ユダヤ人は、歴史上バビロンやエ
ジプトに連れていかれたので、その土地の宗教
も少なからず影響しています。

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は、同じ神
様を崇めています。この三つの主教をアブラハ
ムの宗教といいます。

そして、後世の画家達が、天使に羽を着けたの
は、ギリシャ神話の影響と言われています。

つまりアブラハムの宗教は、一神教で有名です
が、ルーツをたどれば、多神教です。しかも様
々な宗教の要素を取り入れています。

それが、天使を創造した理由かもしれません。

キリスト教では、父と子と精霊のみ名において
とよく言いますが、未だに、神は、どこまでを
神とするのか議論しています。

一神教で、戦争や宗教間の争いが絶えないのは
多神教を無理やり一神教にしたことに無理があ
ったのでは、と僕は考察します。

キューピッドの正体

ウィリアム・アドルフ・ブグロー
「クピードー」1875年

中性的な幼さを感じる美少年タイプの身体が美
しい作品です。羽で絶妙に股間を隠す手法は、
流石と言えます。

さて、今度は、キューピッドの真相に迫ってみ
たいと思います。

こちらは、ギリシャ神話のエロースが原型。
愛を司る神様です。

エロースは、男性の神様です。

天使と決定的に違うのは「神」ということ。

これが、ローマ神話では、クピードーとなり、
英語読みでキューピッドになりました。

もちろん性愛を司る神です。

この神様は、世界の始まりから存在していた原
初神のひとりです。

ギリシャ神話では、軍神アレースと、愛の女神
アプロディーテーの子とされています。

古代には、逞しい若々しい青年の姿でしたけど
時代が1800年頃になると中性的な少年に描
かれる事が多くなりました。

もっとも、この頃の絵画のヌードでは、男性は
美少年で中性的に描かれることが多かったので
美少年愛が、神の絵画というカタチを利用して
描かれていたのだと思います。

クピードーは、ラテン語で情熱的な欲望を表す
言葉です。

クピードーは、金の矢で射ると相手が情熱的に
なり、鉛の矢で射ると嫌悪感を抱く様になると
いうことです。

矢を射って遊んでいたクピードーをアポローン
が小馬鹿ににしたので、アポローンを金の矢で
射ち、たまたま近くに居たダプネーを鉛の矢で
射ったため、アポローンは、ダプネーに恋をし
て追いかけ回し、堪らずにダプネーは、月桂樹
の木になってしまったという話しは有名です。

天使と神の区別を図式化してみました。

こうして見ると、天使とクピードー(キューピ
ッド)の違いが一目瞭然です。

面白いのは、天使の階位が上がるにつれて人間
離れした容姿になることです。

神を擬人化しているのに不思議なことです。

クピードーのほうが古くから存在し、天使は、
後から創作され、前者が神で、後者は、神の遣
い。それが、真実です。

僕が、クピードーのモデルをした

ブグローの作品を元にアレンジした作品です。

制作は、親しい女友達です。

もちろんモデルは、僕です。腕は、敢えて組ま
ないで胸を見せる様にすることで、より中性的
な感じに仕上がっています。

中性的を意図して描くというより、僕をモデル
にすると必然的にこうなっちゃいます。

ま、でもこれは、これでアリかなと思います。

我ながら綺麗な作品だと思います。

弓矢も原作を模してリアルに再現しています。
僕の裸体の描写もさることながら、背景の書き
込みも凄いと思います。

森の中で、こんなクピードーと出会ったら弓矢
で射られる前に恋に落ちそうです。

製作には、約2週間。ポーズは、1週間です。

おはようと女友達の家に着くと服を脱いで、休
息を入れながら約8時間ポーズをとりました。

普段から何度もヌードデッサンで裸体は、見ら
れているのですが、アクリル画でじっくり観察
されるのは、不思議な気分になります。

時と共に羞恥心は、薄れ、僕も制作活動の一環
としてヌードを提供している共同作業をしてい
る感じです。

足の指先を重ねて壁に寄り掛かった姿勢でポー
ズを取るのは大変でした。
アンバランスなポーズなので静止しているのが
難しいポーズでした。

どうせ羽で隠しちゃう股間の大事な部分も描い
ている時は、丸見えです。

実は、性器を描いてから羽で塗りつぶしている
んです。か、可愛そう・・・でもリアルを追求
するとそうなっちゃう。

その証拠に、羽の下にごく僅かですが、性器の
根元が見えています。

羽で股間を隠しているので女性の様にも見える
不思議なクピードーです。

オッパイが少し膨らんでいるので、両性具有の
神ヘルマプロディートスとのミックスみたいな
感じがします。

自分が、性愛の神様クピードーのモデルになっ
た気分は、光栄な感じです。

描き手の女友達は、僕のヌードには、神々しさ
があると言ってくれました。

自分のヌードを神々しいと褒められて思わず、
ニッコリです。

なぜキューピッドは、裸なのか

ギリシャ神話の神様は、ほとんど全裸か、少し
布を巻いた姿です。

ギリシャ彫刻の神が、そんな感じで全裸や半裸
だったので、古代ローマでも、それに倣って裸
の彫刻が多く作成されました。

そんな流れで、キューピッドも裸なんです。

性愛の神様なので、自らもエロスを醸し出す裸
のお姿になったのかもしれません。

神話は、ともかく、後世の作品でキューピッド
が裸なのは、それは、裸への欲望です。

ルネサンス期から、人間の裸の作品が数多く生
み出されています。

中世のフレスコ画やイコンなどに見られる平面
的な人物像は、リアルな三次元的な絵画や彫刻
に生まれ変わります。

しかし、リアルな人間の裸を表現出来てもある
制約がありました。

裸は、神か神話や聖書にまつわる題材。

これが、条件でした。

だから、裸の作品は、宗教画が多いのです。
神様の裸は、OKということです。

それでも、中世の平面的な美術感絶望的な作品
に比べれば、何倍もましです。

とにかく、宗教画であれば、人間のリアルな裸
が描ける!これは、大いなる前進です。

生々しい「人」のヌードが描かれるのは、もっ
と後世になってからです。

そして中性的とか綺麗な美少年に描かれたのは
クライアントの要望です。また、描き手の趣味
もあったかもしれません。

現代でも裸には制約があり、特に幼児は、厳し
い制約があるので、当時の画家達は、その制約
を「宗教画」という免罪符で乗り越えて裸の作
品を生み出していました。

キューピッドが、なぜ裸なのか?

それは、元々裸だったことと、描き手や依頼者
の要望が「裸」を求めていたから。

では、ないでしょうか。

まとめ

知っているようで知らない天使とキューピッド
の違い。いかがだったでしょうか。

由緒は忘れても、現代まで信仰されるギリシャ
神話の凄みというか存在感を感じます。

今まで、宗教をゴッチャにして認識していた人
は、ここで古代の宗教と現在に続く世界最大の
宗教との違いを区別してください。

一神教は、二元論を生み出します。

居るか居ないか。イエスかノーか。ゼロかイチ
か。男か女か。様々な事象を単純な選択肢で解
決しようとします。

つまり多様性を失うということ。それが、争い
を生み出します。多神教は、その真逆を行く豊
かな多様性を持ちます。

今回は、天使とキューピッドの違いから、宗教
という話題に大きなアンチテーゼを投げかける
という結論にたどり着きました。

中性的な僕は、玉虫色とかグレーゾーン。曖昧
という、どっちつかずの考えが好きです。

美しく平和なのが一番です。